ものづくりの「匠」NITTOとコラボレーションし話題となっているDAVOS【B907 ブルムースバー】
今回はその開発経緯と秘話を、株式会社日東の吉川社長・吉川常務にインタビューした内容を基に深掘りし徹底解説致します。
コラボレーションの始まりときっかけ
フカヤ(旧深谷産業)とNITTO(日東)との繋がりは古く
過去にはフカヤオリジナルブランド「GHISALLO」でもNITTOとコラボレーションしており、今回の「B907 ブルムースバー」は、フカヤ創業110周年の際にコラボ企画として提案していた製品。
当時は誰もが予想していなかったコロナ渦で、自転車パーツの需要が急激に増えNITTOも受注がMAX状態になり企画が保留となっておりましたが、構想から4年、具体的な内容がスタートしてから2年の歳月を経て遂にリリースされます。
NITTOの「伝統と信頼」
NITTO(株式会社 日東)は1923年に創業し、100年以上にわたって高品質な自転車パーツを製造している国内メーカーです。
特にハンドルやステム、キャリアなどの金属加工技術においては世界的に評価されており、日本国内はもちろん、海外のライダーからも絶大な信頼を得ています。
そしてNITTOの製品は、職人の手作業による精密な仕上げと厳格な品質管理によって支えられています。
長年にわたる開発と改良の結果、強度・耐久性・美しさの三拍子が揃った製品を、今もなお生み出し続けています。
NITTOの「ものづくりと耐久試験」
NITTOは、100年以上の歴史と技術を受け繋ぐ職人たちが、細部に至るまで精密な「ものづくり」を行うメーカー。
Tig溶接から研磨・仕上げまで一貫して手作業で行い、高品質な製品を製造。
長年の経験と技術を活かし、製品の耐久性に徹底的にこだわっており「耐久試験」では過酷な環境での使用を想定し、一定の重量をかけた曲げ試験や反復的な応力負荷テストや高負荷の繰返し試験も行い極限まで品質を追求。
錆や腐食に対する耐久性も徹底検証し、長期間の使用にも耐えうる剛性と品質を確保。
その結果として、世界中のライダーから「信頼される製品」が生まれています。
「ブルムースバー」誕生の背景
1980年代初頭、マウンテンバイク(MTB)の黎明期に登場したのが、NITTO製の「ブルムースバー」です。
このステム一体型ハンドルバーは、当時のMTBパイオニアであるトム・リッチー氏とゲイリー・フィッシャー氏がNITTOに製作を依頼したことがきっかけで開発されました。
彼らは、荒れた山道を走破するために強度と操作性を兼ね備えたハンドルバーを求めていたのです。
「その時にリッチーから溶接技術指導を受けた際のビデオテープが、今も保存されています。」
リッチーのこだわりは細部までに至り「製造に使用する溶接棒まで指定され、アメリカから取り寄せて作業しました。(NITTO吉川社長談)」
尚、「Bullmoose(ブルムース)」は英語で「雄のヘラジカ」を意味します。
この名前の由来は、ハンドルバーの独特な形状が、ヘラジカの大きく広がった角(ツノ)を連想させることから由来しています。
DAVOS「B907 ブルムースバー」の開発経緯と秘密
「B907 ブルムースバー」は、DAVOSの「ブランドコンセプト」に基づき、日本の市場ニーズに合わせ、NITTOの「技術」と「経験値」を掛け合わせて実現した製品。
これまでのブルムースバーはオールドマウンテンバイクに適した設計が行われてきましたが、この製品は現代のフレーム「M-605 All-TERRAIN」や「D-604 ネオランドナー」などのロングリーチを採用する現代のフレームジオメトリーバイクにターゲットを合わせて開発をスタート。
具体的にはステム長を短く設定し、スィープ・ライズ・アングルを調整しハンドルポジションが旧来のブルムースバーと同じ位置になるように考慮されています。
これによって、これまでのブルムースバーと同じような操作感を現代のバイクでも味わえます。
さらにステムアングルは0°に設定しており、ハンドルを上下反転させシチュエーションに応じて使い分けることも可能。
M-605のようなオフロードバイク(ATB・MTB)であれば表側(NITTO刻印有り)のライズアップポジションで、D-604のようなツーリングバイクにはダウンライズになる裏側で組むことで、それぞれに適したポジションを出しやすくなっています。
また市場のニーズを徹底的にリサーチ。過去モデルへのリスペクトも含めて、ディテールを崩さないようにしてステムクランプ径は28.6mmのアヘッドタイプを採用。
ハンドル前面はフラット(真っ直ぐ)にして「ハンドルバッグやフロントバック」「ライトやサイクルコンピューターのマウントも装着したい」との要望に対応できるよう、三角形の内側の間隔を調整しています。
それに伴い「B907 ブルムースバー」はステム部分が三角形がワイドスタンスに広がっており、通常はステムとバーの隙間が正三角形となるところ、二等辺三角形にデザインされています。
実はこれを実現するには NITTOの「技術力と経験値」が必要不可欠でした。
当初、設計の段階でこの「二等辺三角形のデザイン」を要望したところ、今回の「B907 ブルムースバー」を担当された、NITTO吉川常務からは「隙間が正三角形でないと応力集中し折れます」との見解があった。
実際に耐久試験を行うために作られた試験品は、耐久基準をクリアすること無く無惨にもステム部分から破断。
そのためハンドルバーの角度・幅などを変更しつつNITTOならではの高度な製造技術を追加して耐久テストを行ったところ、厳しい耐久基準をクリア。
厳しい耐久基準をクリアしたその「秘密」は、バー側の溶接をTig溶接しステム側の溶接をフィレット溶接し、適材適所に溶接方法を使い分ける技術の採用です。
Tig(Tungsten Inert Gas)溶接は、高温のアークで溶接部を一体化させる精密な手法。高強度で美しい仕上がりを実現し、ハンドルバー全体の剛性が向上。
フィレット溶接は2つの部材が直角または一定の角度で交わる接合部に施される溶接のことで、溶接部分の形状を滑らかにし応力集中を防止。見た目の美しさだけでなく、耐久性を向上させる効果もあります。
研磨による仕上げ
NITTO製品は熟練した職人が一本一本手作業で研磨し、なめらかな仕上がりを実現しています。
細部に至るまでこだわり抜かれた仕上げにより、NITTOならではの美しさが生ます。
特にCP(クロスセクションポリッシャ)メッキの技術やカチオン電着塗装(KDP)の品質は他に類を見ない水準で、錆びにくく長く美しさを保つことが可能です。
このような優れた技術力によって、ブルムースバーをはじめとするNITTOの製品は長年愛され続けています。
まとめ
オールドスクールなスタイルと実用性を兼ね備えた【DAVOS×NITTO】B907 ブルムースバーは、NITTOの100年以上にわたって培ってきた「経験」と「高度な製造技術」によって生み出されています。
そしてこの製品は初代ブルムースバーを生み出した吉川社長の歴史と経験を吉川常務が受け継がれて創り出された「NITTOの歴史」を語る上で欠かせない存在です。
様々な「歴史と想い」が盛り込まれた「DAVOS×NITTOB907 ブルムースバー」
この製品を通じてツーリングの「楽しさ」を再発見してはいかがでしょうか?
【DAVOS×NITTO】B907 ブルムースバー
■詳細
幅:720mm ±6mm
コラムサイズ:28.6mm
ライズ:28mm
長さ(レンチ):90mm
バックスウィーブ:18°
アップスウィーブ:0°(HA 72°の場合)
重量:760g(実測)
カラー:CPメッキ、BLK
価格:14,300円(税込)