新入社員「★(ほし)」の【開発者の方にいろいろと聞いてみました】インタビューシリーズ 第一回「DAVOS GP-1」

皆さん、こんにちは新入社員「★(ほし)」と申します。

私は4月にフカヤに入社したばかりの新入社員です。父親が元競輪選手とういう家庭環境で自転車にはいろんな意味で関わりが深い自分ですが、自転車部品にはあまり知識がなかったりします…。
そんな私がフカヤに入社して自転車の製品に関していろいろと勉強していく過程で「何故?どうして?」と疑問に思った事を率直に調べてみた内容をフカヤブログの場をお借りしてユーザーの皆様と共有できたらと思います。

そんなわけで★の独断と偏見でセレクトした最初のアイテムはフカヤオリジナルブランド【DAVOS】の「GP-1グラベルパッキングケージ」です。

「GP-1グラベルパッキングケージ」は2Lのペットボトルから輪行バッグ・折り畳みイス・テント・寝袋など様々なアイテムを自転車のダボ穴を利用していろいろな位置に取り付けることが可能になっている人気商品でもあります。今回は、「GP-1グラベルパッキングケージ」について立案・開発者でもあるM先輩から直接お話を聞かせて頂きました!

★:Mさん本日はよろしくお願いします。「GP-1グラベルパッキングケージ」についてお話を聞かせてください。

わかりました。何でも質問をどうぞ。

★:そもそもグラベルパッキングケージって何のための物ですか?

パッキングケージはズバリそのまま、ボトル以外の荷物も運ぶことができる便利なケージだね(笑)

★:「グラベル」の意味は?

後述するけど、砂利道とか未舗装、要は「オフロード」ってこと。オフロード(悪路)で荷物を運ぶために特化している形状ってことだね。

★:なるほど勉強になります。

フカヤの社員ならそれくらいは学んでおこうね…(笑)ちなみに「GP-1グラベルパッキングケージ」が生まれる発端になったのはミノウラさんの「MC2000マルチケージ」が起源になっているんだよ。

★:「MC2000マルチケージ」とは?

「MC2000マルチケージ」はミノウラさんが作ったオンロード向けマルチケージで用途もGP-1と同じく荷物を運ぶための物です。横ストラップが2本付属していてフレームのダウンチューブに取り付けた時は輪行袋とか2Lのペットボトルをつけるのに向いているジュラルミン製のケージだね。

★:既にあるなら作る必要は無かったのでは…?

そういうわけにはいかないね、「GP-1グラベルパッキングケージ」に”グラベル”とついているのは「MC2000マルチケージ」で足りないと思ったことを補うためだから。

★:なるほど、ではその「GP-1グラベルパッキングケージ」をなぜ開発しようと思ったか、経緯を教えてください

「MC2000マルチケージ」はロードバイク・ツーリング・オンロードユーザーを想定してミノウラさんが開発した製品でグラベルでの激しい使用は想定されていなかったんだ。要はボトルケージに入りきらない大きな荷物を積載するために作られたけど、グラベルバイクまでをメインターゲットにして作られた訳ではないという事。

★:オンロード向けに作られていたからグラベルに特化した物は無かった?

当時、グラベルバイクは僕みたいにドロップバーでオフロードを走る!みたいなオフロード好きな人だけが使っていたの。でも最近はグラベルバイクの使用用途としてキャンプツーリングニーズが多くフロントフォークにもダボ穴が付くようになったよね?ということはフロントフォークにも荷物を積載できるようになったということ。

じゃあ「MC2000マルチケージ」でオフロードを走るとしよう。するとオンロードを走る時にはない激しい縦揺れが発生する事に気が付くと思う。その時、激しい縦揺れに横ストラップ2本の固定では飛び出しそうになる荷物に不安を感じてしまうかもしれない。

★:想像は出来ます。それでどう解決したのですか?

「MC2000マルチケージ」と「GP-1グラベルケージ」の大きな違いに縦揺れが発生した際に荷物が飛んでいかないように縦のストラップが付属していることがまず挙げられる。悪路の走行でも載せた荷物がずれる事の無いように縦にストラップを通す穴を配置したのさ。(横2本、縦1本)実際は「MC2000マルチケージ」でも出来ない事は無かったけど見てもらうとわかる通り、グラベルに特化させているわけではなく、軽量するためにジュラルミンパイプで作られているので強度に不安があった。その分「安い」という利点はあるけどね。

※[GP-1グラベルパッキングケージ本体+ストラップ3本] GP-1グラベルパッキングケージは一枚の板から作られていている。縦ストラップを含めた3本が付属

※[MC2000マルチケージ本体+ストラップ2本] MC2000マルチケージはパイプで作られていてストラップ横2本が付属

マルチケージ「MC2000マルチケージ」ではオンロードの使用に幅広く対応している分、グラベルで使おうとするとどうしても強度に不安が残る。加えて取付け位置の自由度も無かった。ならば新しい製品を作ってしまえという事で「GP-1グラベルパッキングケージ」の立案・開発開始に至りました。

★:開発でこだわった点を教えてください。

まずは価格!これはミノウラさんとフカヤも長年こだわっています。正直おしゃれなブランドは他にもあるけど、「¥15,000です!」と言われて買う?

★:買わないですかね、さすがに高いと思います。

だよね。物として現実的な価格となるようにメーカーと交渉して調整している。
だけど正直デザインに関しては「ダサい」とか「特徴(センス)が無い」とか言われることはあるけどね(笑)

★:ダサい?ですか・・・

そう、「ダサい」は良く言われるけどそれは悪いことだとは思ってはいません。
海外のメーカーと比較してディテールを詰めることは出来る。けどその分デザイン料を含めると値段は高くなってしまう。流行りの言葉で言えば「バリュープライス」。なにをもって適正価格とするか。
「GP-1グラベルパッキングケージ」はデザインよりも価格と性能を優先しているのさ。恐らく、デザイン性を優先する人は見た目のデザイン性を優先して買うと思う。

★:それ以上を求めればそれ以上のブランドから、確かにその通りだと思います。

分かりやすく言えば【DAVOS】はアパレルで例えると「ユ〇〇ロ」のような気軽に購入して使い倒せる製品・どんなバイクにもマッチする無難なデザインになっています(笑)

★:ほかにこだわっている点は?

実際に自分でも使ってテストを重ね「納得」できるかを大事にしていることです。
だから「GP-1」は立案から完成までに1年半ほどかかっているね。
あとは他社の製品を気にせず作るのも大事にしているよ。

★:他社を気にしない?

製品を作るうえで一番心がける事はこの製品を使う事で「どうサイクリングが楽しくなるか?」だと思っているんだ。だから「他ブランドのコレが売れているからコレを作ります!」というのはナンセンス。
自分も含めユーザーが「サイクリング」という「遊び」のなかで、こういう製品が出来た時、こういう遊びが増える。その時にあると便利だなと思う物に着眼点を置き、企画して製造メーカーに立案・説明しています。

★:例えばどんなことを考えて?「こういう機能があったらいいな」といった感じに?

他社製品に無い機能を盛り込むというよりは「遊び」のシチュエーションで「どういう場所に行くか?」「どんなことをしたいか?」を想定して考えているね。
例えばさ、キャンプライドに行く事を想像してみて。

★:キャンプライド…?

・・・キャンプ用品を自転車に積んで自走で現地まで行くキャンプ泊が前提のサイクリング(ツーリング)の事さ。
キャンプライドは基本的には朝早く、日の出前に出発する事が多い。今だと4時半くらいかな。その時に少し困る事があるのだけど、わかるかな?

★:わかりません!

・・・(笑)夜明け前だから結構外は「暗い」。暗ければどうする?

★:ライトを点けて走ります!

(笑)当然、ライトを点けて走るよね。けどキャンプライドの場合ハンドル周りには補給食なんかを入れたフロントバックや小物入れが満載に付いていると・・・

★:バックが邪魔でライトを取り付けられない!

そう、フロントバック越しに路面を照らすことが出来ないということ。
日中でもトンネルの中などライトを取り付ける必要が出てくる。だから「GP-1グラベルパッキングケージ」にはフロントライト(アクションカメラなども)を取り付けられるように「GPマウント規格」のネジ穴を用意する事で、荷物満載の自転車でも荷物の下からライトと照らすことができるのでサイクリングが「快適」になるように工夫しているのさ。

※ライトを取り付けた状態の「GP-1」、路面近くからライトを照らすことが可能になる

★:なるほど、自分の体験を元に製品を提案しているわけですね。

そういうこと。
さらに付け足すとライトに関してはなるべく路面近くに付けたい理由が別にある。
今度は行きではなく、「帰り道」を考えて。朝、暗いというのは変わらないけど行きと帰りでは路面シチュエーションが異なってくるよね。

★:道…ですか?

そう、道。行きは舗装路の自宅からスタートして山道を登っていく。けど帰りは山道、砂利道からスタートして降る。
つまり、暗い中で山道、砂利道を降ることになる。その際に上から明るいライトを照らすと路面の凹凸がわかりにくい。
アスファルトであれば黒い路面なので白いライトを当てても分かりやすいけど、砂利道は白いことが多い。そこにライトを当てても凹凸の判別は難しい。

★:危ないですね

(笑)だね、「GP-1グラベルパッキングケージ」に”グラベル”とつくのはそこにも理由があるのさ。
グラベル(未舗装路)であってもライトをなるべく路面近くから横から照らすことで、路面の凹凸を浮き出やすくなる工夫をしている。
行きは上りなので速度が出ないからもしもの時に対応(避ける)できるが帰りは下り、更に真っ暗な砂利道となると・・・走ったことのある人にはわかると思うがオフロードでは上りと下りでは同じ路面でも見え方は全く異なる。
サーフィンの波と同じで向かってくる「波を越える」のと、浜に向かっていく「波に乗る」のでは衝撃が全然違うでしょ?

★:サーフィンはやらないので良くわかりませんが言っている意味はなんとなくわかります・・・

そっか・・・(笑) けどね場合によってはこれが原因でパンクや転倒の原因となってしまう事もあるぐらい大事。
荷物を積まずともライトを取り付けるアダプターとする事でライトを路面に近い所に持って行くことができ、安全に走行することが出来るようになるのさ。
さらに「GP-1グラベルパッキングケージ」はシンメトリーで作っており、ネジ穴も左右均等に配置されているので右・左の区別もありません。左右どちら側にもライトが取り付けられるから、月明かりが無い曇りの日などの夜道でもダブルライトで更に明るくできるのさ。

★:では反対に苦労した点があれば教えてください。

特に部材の厚みの選定には苦労したかな。
厚みを持たせれば耐荷重・強度は上がる。しかし部材が増え価格が上がり重量が増えてしまう。この折り合い調整に悩んだね。
「GP-1グラベルパッキングケージ」は平らな鉄板の部材をレーザーカッターでカットし、プレス機で曲げて加工していますが荷物を受けるL字の部分は強度を持たせる必要があった。厚くしたいが価格は高くなる。なるべく薄くはしたいが強度は欲しい。ここの加減が難しい。

※「GP-1試作品」、部材の厚み、板材の角度を変えながら作成していることがわかる。

★:結局のところ解決方法は?

結局・・・紆余曲折はあったが最終的には板材の厚みは薄くし、ミノウラさんの提案でL字の箇所に受け爪を取り付けることで強度を増す事に成功したのさ。

※「GP-1」底面、L字の部分に2個の爪をつける事で耐久性を上げている

★:耐荷重が2kgとありますが「MC2000」より減っていませんか?

・・・よく気づいたね。けどこれ別に薄くした弊害とかでは無いの。
「MC2000」が耐荷重5kgだけど、「GP-1」が2kgと設定しているのは下部にライトを取り付ける事で重量が増える事も想定しているから。ただ、ケージにいろいろと積込み過ぎはハンドリングが重くなってしまうのでフロントフォークに過積載するのは良くない。もしもの時にバイクがコントロールできないと危ないからね。
重い物はフロントかリアのキャリアに載せるなり配分を工夫する必要があるし、重量配分を考えるのも含めキャンプライドの醍醐味だと思っている。
あくまでも「グラベル(悪路)」での走行でも耐えられるように制限を2kgまでとして推奨している。

★:では取り付け方や外し方ってどうなっていますか?

基本はボトルケージのボルト穴につけてもらう形。いわゆるダボ穴さえあれば取付けは簡単に可能。
取付け位置はかなりの幅で上下する事ができる、穴が沢山あけてあるのでサイズの大きいバイクでも低く取り付けて重心位置も調整可能さ。

★:これ「素材」ってなんですか?

「鉄」だね、鉄で作っている。他メーカーがアルミで作ることが多い中、あえて「鉄」にしています。

★:鉄にする理由があるということですか?

だね、それはズバリ耐久性のため。例えば自転車を立てかけた際に誤って倒してしまってぶつけてしまった事を想像してごらん。L字の部分が曲がってしまう事が考えられるよね?曲がってしまったら角度を修復しなければ使えません。
そんな時にアルミだと何度か折り曲げると素材が伸びてしまい亀裂が入り折れる場合が多い。その点「鉄」はある程度修復が可能な素材です。
ロングツーリング用キャリアを「鉄(クロモリ)」の定番素材で作るのはそういった事態も想定しているから。

★:あと価格はどうですか?類似品と比べて高いですか?安いですか?

「GP-1グラベルパッキングケージ」は税込みで¥4,070円です。
恐らく、価格単体で考えると「高い」と感じると思う。ただ、他社製品と比較すれば十分「安い」と断言できる、比較しないにしてもこの製品の「秘密」を知れば十分に納得できる「値段」だと思う。

★:秘密ですか?

実は付属のストラップは「オーストリッチ」さんに別注して作ってもらっていて、表向きは「DAVOS×ミノウラ」のコラボとなっているが、本当はオーストリッチさんも加えた「トリプルコラボ」なんだよね。
しかも「付属ストラップ」はかなり細かい細工をしていて、長さが余った際に巻き取る調節機能もつけている。これはオーストリッチさんで無理をお願いして「手縫い」で行ってもらっているんだよ。
大量生産品ではなく「一つ一つ手作り」なの、だからこそ「コストパフォーマンスは高い」し「安い」と断言できる理由があるのさ。すべてを国内生産していると考えれば「十分安い」と言えるでしょ。

 

<縦ストラップ巻取り例>

※長さが余ったストラップも…

※クルクル巻いていき…

※縫い付けられたマジックテープでまとめられるようになっている。車輪に巻き込まれることなく安全!

※横ストラップも同様。左右ともに巻き取る事の出来るようになっている。

★:トリプルコラボはなかなか聞かないですね

ここが【DAVOS】というフカヤオリジナルブランドの「強み」なんだよね。
メーカーとメーカーを掛け合わし、単体では作れない物を作ることが出来る。実際、「GP-1」もDAVOSブランドでなければ不可能な製品。ミノウラさんだけではストラップの問題で製作できなかったものをフカヤが仲介する事でオーストリッチさんとの懸け橋となり制作に至ることが出来たのさ。

★:どのような人やシーンに「GP-1」はオススメできますか?

ここまでの話の流れからすると、「GP-1」は”ガチ”なキャンプライドやグラベルライドに使うイメージがあると思うかもしれないけど、本当に使って欲しいのはむしろそういったシーンに「憧れている人」にこそ使って欲しいと思う。

★:そういったシーンとは?

例えば、自分はよくやりますが週末の現実逃避的なサイクリング。人それぞれに目的はあると思いますがその時にしか見えない景色を見に行き、そこでコーヒーを飲むといったシーン。
そこに必要な道具(イスやバーナーなど)を持って行くのにちょうどよいと思う。
グラベルと名が付いてはいるがグラベルにしか使っていけないわけではないし、「マウンテンバイク」「クロスバイク」「ロードバイク」なんにでも使っても問題無い。使い方次第で広く楽しめるアイテムだからこそ「自由な発想」で使って欲しいと思う。もちろん”ガチ”な人が使っても問題はありませんよ(笑
最初に言いましたが「GP-1グラベルパッキングケージ」はあらゆるサイクリングを「楽しむ」為に作っています。

★:最後に製作者としてユーザーの皆様に伝えたい事はありますか?

そうだね・・・いっぱい買ってください!(笑)
ではなくて、FUKAYAの製品、特にオリジナル製品はわりとユーザーからの意見をヒントにして作っている事が多い。
もし、気になる点、改善して欲しい部分があったら購入して頂いた店舗様を介して連絡していただけると嬉しいですね。よりサイクリングが「楽しく」なる製品を産み出すヒント・アイディアお待ちしております!

★:ありがとうございました!
制作者の情熱が伝わってくる内容でとても勉強になりました!
自身が本当にグラベルバイク好きだからこそ気づける点や細かいこだわりが見え、「GP-1グラベルパッキングケージ」を作ることが出来た。そう感じることができるインタビューでした。
引き続き他の製品でも「裏話」が聞き出せれば投稿したいと思いますので【開発者の方にいろいろと聞いてみました】インタビューシリーズよろしくお願い致します!


【DAVOS】

グラベルパッキングケージ GP-1  

本体サイズ:高さ250mm 背面部:幅65mm 底部:幅100mm奥行100mm

外寸:高さ253mm奥行102mm幅100mm

耐荷重:2.0kgまで

<付属品>

横ベルト×2 長さ770mm(バックル込みの最大長)横幅25mm

縦ベルト×1 長さ970mm(バックル込みの最大長)横幅20mm

価格:4,070円(税込)

製品ページ↓↓↓↓

グラベルパッキングケージ GP-1